※これは事実を元にしたフィクションです。登場する個人名・団体名などはすべて架空のものなのでご留意ください。
時に、バーベットということばをご存じだろうか?
酒場などで相手を引っかけてお酒を奢らせるために使われていた賭けゲームの一種を指すバーベットは、原則として仕掛ける側が圧倒的に有利になるルールを設けられている。
古今東西様々な種類や逸話があるので、興味がある方は時間のある時にでも調べて欲しい。
話を戻すが、私はこのバーベットを用いて、打倒ナガノのための奸計を企てることにした。
その下準備を行うべく、まず私は近所の量販店へと足を運び、同じ柄のトランプを13組購入する。
図解で説明する方が分かりやすい気がしたので、まずは下の画像を見て欲しい。
遊戯王というマンガを読んだことがある方であれば、このゲームのからくりについて既に知っているだろうが(御伽が城之内に仕掛けた例のアレである)順序だてて説明していこうと思う。
ルールは単純明快。
【トランプのエース4枚をシャッフルして伏せ、その中から同時に2枚を引き、同色のペアであれば勝ち。色がそろわなければ負け】
つまり、黒・黒か赤・赤のペアを引けば相手の勝ち、色の異なるペアを引けば私の勝ちである。
ぱっと聞くだけでは1/2の平等な勝負に思えるかもしれないが、実は違う。
同時に引くというのがミスリードであり、単純に1枚ずつ引くと、残った3枚の内同色のカードは1枚しか無いため、同じ色を引くことのできる実際の確率は1/3である。
カードを引く側の勝率:約33%
カードを配る側の勝率:約66%
3回やれば2回勝てるこのバーベットに対し、私は勝利を盤石に――いわば100%負けないゲームにするべく、オリジナル要素を付け加えることにした。
山は全てエースのみで構成し、微細な印をつけることで裏面からでもエースの種類を把握できるようにしておく。
その中から4種のエースを取り出し、4枚をシャッフルした後それぞれを均等に割った山の上に置く。
この時、1枚目のエースとその下2枚目のエースの色が対になるように配置する。
相手が同色を選んだ時に限り、私(カードを配る側)が一番上のカードとその下のカードを入れ替えれば、同色が成り立たなくなる。
必勝必須のフォーメーション。
だがしかし、これには仕込みを行うためのスムーズな動作が要求される。
なので私は、それから6日間にわたり、この条件を作り出せる山の分け方・裏側からカードの種類を判別する認識能力・手を添えるだけで山の一番上とその下にあるカードを入れ替える技術を磨き続けた。
手品関連の動画をひたすら視聴しながら、実際に一連の動作を様々な角度から撮影し、見返しながら検証を重ねていく。
徹頭徹尾、徹底的に。
不自然さの欠片すら出ない様、空き時間の全てを費やした。
そして――。
「自画自賛なようで気が引けるが……整ったね、完全に」
約束の前日、23時の半ば。
私はついに目標とする最高水準へと至ったのだった。