宮園クランがなんやかんやで小説家になるまでのブログ

凡そ社会的地位の無い30代男性が小説家を目指す為のブログ

ラブ♡マイ♡ブライド【鏖】

◇主要登場人物◇




♤脳針筵  (ノウバリムシロ)   : 卵虫遣い


△刑部牢庫 (オサカベロウコ)   : 鎧鍛冶屋


△数々人々 (スウスウニンニン)  : 百器使い


♧伽藍端〆 (ガランハジメ)    : 傍観者


♡伽藍真衣 (ガランマイ)     : 最厄の魔女






木がメを背負って、


几が又に被さって。


戮する時間の、はじまり・はじまり。



終門より5~600メートル離れたあたりに位置するその建物の最下層に、伽藍真衣は幽閉されていた。



青を基調とした振袖のような着物を纏い、長く美麗な黒髪がそれらを包み込むように伸びている。冷たいコンクリートの床に正座したまま、彼女の目は閉じられていたが勿論眠ってなどはいない。



そして閉じられた二つの目を開く。鉄格子の向こう側――そこには見慣れた兄の姿が在った。



「こんばんわ。おにいさま」



「やぁ、僕のかわいい妹。いつもなら寝ていてもおかしくないのに、今日は随分夜更かしをしているのだね」



深緑がかったライダージャケットに黒のジーンズ。和をもって良しとする緑夜叉の村人達とはかけ離れた服装を自らのスタイルとする、伽藍端〆は酷く不機嫌そうに妹へと返事を返した。



「睡眠不足はお肌に悪いといつも言っているだろうに。それともあれかい?まだ妨害者がここに颯爽と現れて自らを助けてくれる未来を、信じて疑っていないのかい?」



あの方の、と。真衣はやけに歯切れの悪い口調で、話す。



「あの方のお顔もお声も、わたくしは未だ知りません。語りかけるだけで、一方通行なのだから詮無きことなのでしょうがね。でも、それでも彼は――」



「彼はんだよ。カネツグの爺に討たれた旨をついさっき耳にしたんだ」



彼女が紡ぎだそうと僅かに残っていた希望の言葉を、端〆は容赦の無い事実を告げることで遮った。



「そもそも、土台無理な話だったんだよ。救済措置があると見せ掛けて決して叶うことも敵うこともない、不可逆的で至極劣悪なこのシステムにおいて、魔力を持たない魔術も使えないただの人間が、お前を救うことなんて、絶対に無理な話だったんだよ」



「・・・・・・・・・」



「思えば。思い出せば、思い返せば、父さんの時もそうだった。あの時は僕らは対象で無かったとはいえ・・・・・・とどのつまりはリンチだよこんなもの。不条理で、不可解で、異常なんだよ。気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い。なんだよ儀式って。意味不明過ぎる、本当に」



「・・・・・・・・・」



「村に将来仇を為す?はんっ、そんなもの僕から言わせれば『クソ食らえ』だね。合理的な指針も何もあったもんじゃない、不明瞭で一方的過ぎる決め付けじゃないか。強すぎる魔力を有するから駄目だって?僕の最愛の妹がそんなくだらない理由で、処刑されようとしているこの現状はなんなんだよ。狂ってるよ、本当狂ってる」



「それが掟で、決まりなのですから。どうかおにいさま、怒らないでくださいませ」



「怒る?ねぇ今ひょっとして怒るって言った?違うねこれは怒りとは違う、もっと低俗で下劣な蔑まれて当然の感情だよ。はっきり言って僕には力がない。歴然たる力を持たない、不肖の兄に他ならないんだ」



お前と違ってね。そう自嘲的に呟く端〆の手には、柄の長い木刀のような物が握られていた。



「だから。これが妹に対して兄が出来る、最大にして最期の行為だ」




振りかぶり、振り下ろす。




剣先のぶつかった、鍵穴が5つあった無骨そうな錠前は、カチャンと軽い金属音を立てて床に落ちた。



「どうして・・・・・・そこまでして。神器まで持ち出すなんて、おにいさまはにたいのですか!!!」



「妹がされるってのに何もしない兄貴がこの世にいる訳ねぇだろうが!!!!!!」



真衣にとって記憶が確かであれば、兄である端〆に怒鳴られたのは、この時が生まれて初の体験であった。



「いいか。僕はこの後村にをつけて回って注意を引く。とはいえ注意を引きづらい能力なんだがな。で、お前はその間に逃げろ。その気になれば人間に対しては誰にも負けない能力を、お前は持っているんだからな」



牢屋に入り素足の妹に雪駄を履かせつつ、持ってきた防寒具の数々を用意する兄をみて、真衣は改めて自分が愛されていることを実感した。



親が居なくなって、最厄の魔女という忌み名をつけられて、罵られて恐れられて、それはそれは地獄のような日々が続いて。



ようやくそれが終わろうかと思う間際に感じた、兄の想いに、彼女は目尻がくなる感覚を覚える。



(ありがとう。ありがとう、おにいさま。わたくしはとてもとても、うれしゅうござます。でもね、そんな危険な大役を今のおにいさまに任せることなど、出来ません。だからせめて、わたくしの)



わたくしの“チカラ”全てをおにいさまへと還しましょう。


「しっかしまぁ、断罪院の旦那も年がいなくはしゃぎすぎなんじゃーないかね」



「否定します。彼はそれだけこの度の妨害者の帰来を善としなかったのです。それだけのことなのです」



終門の室内にて。二人の人間が向かい合って雑談をしていた。



彼と彼女は本来断罪院鉦告が御すここではなく、惨門と至門にそれぞれがそれぞれに番人という立場であるべきだった、二人。



刑部牢庫(オサカベロウコ)と数々人々(スウスウニンニン)は、職務を放棄し雑談に興じていた。



「善ねぇ。立場的に言えば伽藍の娘さんを救う為のナイトみたいなもんだろーに。この場合の悪ってのはうちらを指すんじゃなかろうかね」



「肯定します。しかしながら、善とか悪とかそんな二元論など、複雑怪奇でごったに溢れて絡まりあった人間同士が織り成すこの世では、言ったもん勝ちみたいなところはなきにしもあらずでしょう。立場が違えば、それらは容易にどうとでもひっくり返りますよ」



「確かにかず君の言う通り戯言だよなぁ。ん、ていうか今はちゃんになるの?」



「判定を委ねます。それこそこの退屈を凌ぐには、問答するには時間が有り余っている。当ててみてくださいよ、刑部さん」



問いを投げかけられた女――全身を黒い甲冑で覆い尽くし肌の露出が一切ない、一目には女と判別が付かないであろう刑部は、悩んだ風なくぐもった声を鎧の内側よりしぼり出す。



「うーん、う~ん。どうだろうなぁ、そんなに付き合い長くないし、何よりうちってばいっつも家に引きこもって鉄とか鋼とか金属全般をトンテンカンテンしてる世捨て人風味だしなぁ。ねぇ、ヒント。ヒントちょうだいよ、いっこでいいしさ」



「否定・・・を否定します。仕方ないですね、それなら一つだけ。今の拙者は猛烈にとろろ蕎麦が食べたいでござるよ」



まだ気温が低く肌寒い日が続いているというのに、肩口を千切り取った胴着と膝迄の長さしかないハーフパンツ姿である数々は、握った拳の上に人差し指を立てた拳を乗せて、前振りなくニンニンなどと言い出した。



「露骨っ。それ絶対忍者じゃん。ていうか忍者の敬称ってなんだろう?それともあれ?名前の人々とニンニンって掛けちゃってるのを先に拾った方が良さげな感じかね」



「暫定を装います。さぁさぁ刑部さん、早く答えを。外すと何でもするって約束ですよね?さっさと間違った答え言って、その誰にも見せた事のない柔肌を晒してくださいよ」



「おまっ、てゆーかそんな約束してないっつーの。そもそもセクハラだよ、大体かず君は」



言い掛けて、何なら少し立ち上がろうとした刑部の目の前――あるいは対面に居る数々の目の前とも言える、両者の間に。




ごろり、と。


人間の首が転がってきた。



(!!!)


(!!!)



「和気藹々としている所悪いんだけど、何やら楽しそうな話をしているみたいだね。食べるとか、食べるとか、それに食べるとかさ」



二人が同時に声がした方向を振り向くと、そこには迷彩服を着た男とも女とも判別が付き辛い人間一人、立っている。



広間の入り口の前でへらへらと笑うその姿は、溢れんばかりの狂気に満ちていて。



「聞いてたらお腹が空いて仕方が無くてねぇ~。ボクも混ぜてよっつーか――――今すぐ喰わせろ



かつての緑夜叉村を震撼せしめた魔術師しで、あるいは禍々しき卵虫遣い。



ミートリウムの名を冠する、脳針筵(ノウバリムシロ)の来襲であった。


脳針の姿を視認し、室内でまず一番最初に動いたのは、数々であった。



身を低く屈めながら、全身の筋肉をバネように縮めて弾いて、脳針に向かって猛然と一直線に距離を詰める。



右手には、木製の割り箸が握られていた。




『取って掴みて握って啓いて 武首武首々 斬挫々斬 億戦錬磨――製創戦具!!!!!』




文字に起こさなければ何を言っているか聞き取れない、しかしそれでいてはっきりとしたとても早い口調で詠唱を済ませた直後、人々の持つ割り箸はいつの間にか巨大な釘バットへと変貌を遂げていた。



畳一枚ほどの距離にて、跳躍し、柄の部分を両手持ちにしたそれを渾身の力で脳針の頭へ向けて振り下ろす。



ぐちゃりと、耳障りな音が室内に響いた。



ジャストミートもとい、もともとそこにぴったりと嵌ってるのがあるべき姿であるかのように、脳針の皮を・を・骨を、裂いて・砕いて・磨り潰した。



「まだだッ!逃げろッ!!!」



数々は、着地と同時に後方より刑部の叫び声が聞こえた気がした。同時にずぶりと胸の辺りを何かが通り過ぎたような気もした。




視線を下げると、脳針の左腕が生えていた。




それが生えているのではなく、指先から手首までが自身の身体に突き刺さっているのだと確認する頃には時既に遅く、意識が遠のく間際、もう片側の右手で薙ぐような形で弾き飛ばされ、ごろごろと床を転がりながら、痕の軌跡を描き続ける。



うつ伏せになったまま、数々はぴくりとも動かない。



顔面を見事なまでに陥没させている、そんな人間が織り成すその光景は、正にホラーでしかなかったのだが。その有様を見て、理解して、刑部の脳内――彼女自身の頭の中で「ぷつん」と何かが切れる音がした。そして、



「よくも・・・」



脳針の立っている真下より、二本の黒い腕のような物が床面を突き破り出現する。がしりと両足首を掴んだまま離さず、その場に彼を固定した。



「よくも・・・よくもよくも・・・」



壁を突き破り、刑部と全く同じ形をした鎧が二体、磁石のように脳針の身体に引き付けられ、そして挟み撃ちになる形で彼の身体を圧迫する。と骨が砕ける音が鳴るも、彼女はまだ飽き足らず激怒の咆哮を力の限り発っした。




「よくも・・・・・・・・・うちの友達をりやがったなぁああああああああ!!!!!!」




天井から、床から、壁面から、あらゆる場所から無骨な黒塊が、卵虫遣いへと集まりそして積み重なっていく。




「潰れらあぁあああああああああああああ!!!!!!!!」




刑部牢庫作、[最上]シリーズ。



その鎧は凡そ300kgの総重量を誇り、彼女の魔力を込めて作成したこともあり、ある程度の詠唱を省いての操作が可能である。



それら一つ、二つ、三つを五つ掛けて合わせて計十五体が出現し、それぞれがそれぞれの有する質量に任せた暴力的な振る舞いによって、当然終門は建造物としての耐久力では抗えずに、2分と経たないうちに倒壊した。



土埃との巻き上がる、つい先程まで自分が居た建物だったものを眺め、それでも刑部は緊張を解かなかった。



それは解かなかったのではなく、解けなかったという表現が正しいかもしれない。Not (won't)→ Because(can't)などと、意味も無く英語表記に脳内変換を施してしまうぐらいには、彼女はまだ終わったとは思わなかったし、思えなかったからだ。



瓦礫の下から流れ出したのだろうか、い水たまりが出来ている。



見る見るうちにそれは池のよう広い面積を持ち、そして沼のように深い様相をかもし出していた。



ぽちゃん、と。何か魚の跳ねたような水の弾ける音が聞こえる。そして、地面に広がる沼から脳針が這い上がってきた。



「あ痛たたた、キミってば女の子なのに、存外暴力的なんだね。夫婦になったら逆DVとかしちゃうタイプぅ?」



着ていたミリタリー柄の服装は先程の刑部の攻撃によって所々穴が空いている。が、見る限り一切外傷を負っているように見えない。なんなら数々が粉砕した顔面すらも、元に戻っている。



「愛があるからいいんだよ。それにあんたが化けモノなのは分かったがね」



「化けモノ。ふふふっ、そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。じゃあそれっぽい感じで、こちらも少し攻めに転じてみようかな」



脳針は言って、大きくおおきく深くふかく息を吸い込み始めた。



1分、2分、3分が経過するかしないかぐらいに、長い長い吸引をした彼は、風船のように身体を膨らませて、うっぷと野太い声を出しながら、構える刑部を見下ろし、云う。



「堅そうだなぁ・・・食べれるかなぁ・・・・・・いいや。とりま、いただきますってことで・・・・・・・・・『金耶呑暴威-キャノンボゥイ-』」



「ぐえぇ」という音とともに彼の口蓋より吐瀉物が刑部へと吐き出された。否、それは大小様々な形状の、と橙と白を混じり合わせたような体色をしている数多の魚・魚・魚。それら列を成し群と為って、物凄い勢いで迫ってくる。



かわす事は恐らく出来ないだろうと踏んだ刑部は、迎撃するべく身構えたのだが、刹那に右後方より胴着姿の男の姿が飛び込んできた。魚群と彼女の間を割って割り込むような形で、飛び出してきた。




不自然なくらいに巨大な両刃を付けた、槍のような武器を携えて。




「――――応ッ!!!」




ヘリコプターのプロペラのようだと思った。高速回転する刃と刃が、縦に横に斜めに、向かってくる魚を一匹残らず切り刻み、地に落とす。




渦中の人物は彼女がよく知る人物――数々人々その人である。



「かず君っ、無事だったのかね!」



「肯定、及び否定をします。咄嗟の事で対応出来ず、二人程減ってしまいました。残存は六か、五くらいでしょうね」



得物にこびり付いた死肉を振り払い、数々は振り返る。先程脳針によって貫かれた胸の傷はさっぱり無くなっていた。



「へぇ~キミってば生きていたんだ。面白い、実に面白いねぇ。確かにしたつもりだったんだけれど」



しぼんだ風船の如く、脳針は元の体積、体格に戻っていて、あたら愉快そうに手を叩いている。



「触れたモノを武器化する能力が魔術なのは分かるのだけれども、ふむ。人のことはおいそれと言えないが、随分素敵な人体構造をしているんだねぇ」



「賛同を無視し、断定します。我が一族を屠った罪は万に値する。よってお前は絶対に許しません」



「右に同意っ!うちと最上ちゃん'sも一気呵成して、ボッコボコにしてやんよ!」



瓦礫を押し退けて、物言わぬ鎧達が、一体また一体と戦場へと復帰する。人駆で数えるならば、1体17の構造が出来上がった。




しかしそれでも脳針の余裕は崩れない。




「戦意を削ぎたくないから黙っとこうかと思ったけど・・・やっぱやーめたっ!より絶望的な状況であればあるほど、キミ達は必になってくれそうだ。いいかい?もう既にご存知の通りボクの身体は特殊な魚共で成り立っている。で、まぁその数なんだけど」



人差し指と、中指と、薬指を立てる、卵虫遣い。



「その数さんびゃく・・・・・・」



(意外に少ない。むしろ三千くらいは覚悟していたのだが――)



0.5秒後、その認識は覆される。



「――――万だよ。わかる?3,000,000匹。やー、つってもここ来る前の番人戦とか色々でちょびっとばかし使ってきちゃったし?本当はそんな数今は出せないし?何よりキミ達は堅くて疾くて食べるのに手こずりそうだ。困った。困った。だから聡明なボクはこう考えた訳だ」



(!!!)


(!!!)



ばしゃんと。



地の沼から、大きな口のようなモノが飛び出し、脳針の胴体を食い千切った。分断された腹部より大量の液を流しながら、頬が引き裂かれたかのような、笑みを浮かべる脳針は、果たして。





















「折角だから、第二形態でお相手するよ」




















見た者は皆が皆戦慄し、目にした者は総じて例外なく発狂足らしめる――兇悪な姿に変貌を遂げ始めた。


あちらこちらではじまってしまった小競り合いを尻目に崎は天蓋の月と星を眺めていた。



予測主。いわゆる予知能力者とは似て非なる存在の彼女は、何を想うこともなく、ただ闇の中で佇んでいる。



不意に肩を叩かれた。叩かれた先を、見る。









そこには全身を濡らした裸の白髪男性が立っていた。









「こんばんわ、おばあさん。月が綺麗ですね」



「ぼ、ぼうや・・・・・・アンタ、し、んだはずじゃあ・・・・・・・・・」



垂れた前髪を鬱陶しそうにかき上げて、白髪はどこか気だるそうに、そして怒気を孕んだ声で、応じる。



「そんなことよりも、不躾で恐縮なのですがおばあさん、何か着るもの貸してくれません?俺は今から」







未来のお嫁さんを迎えに行かなければならないので。








[Meatrium] is Attacked!!


And.........


[Heaven] will Revenge!!!!


To Be Continued...▶︎▶︎▶︎Next【討】


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