※これは事実を元にしたフィクションです。登場する個人名・団体名などはすべて架空のものなのでご留意ください。
天笑優雅(てんしょうゆうが)。
自称(もしくは他称)冥王星より来たりし救世の神を目の当たりにした率直な感想としては、“曖昧”の一言だった。
一昔前の占い師のテンプレ装備であるかのような薄紫のアラビアンマスク・桃色のストール・銀縁で彩られた黒いブラウスに、足先まですっぽりと隠れたローブの様なスカート。
胡散臭い格好に加えて、私は眼前に立つ人間の性別が判別できなかった。
容姿端麗で中性的という訳でもなく、何だかニューハーフぽいというか。
男装している女性にも見えるし、女装している男性にも見える。
その所為で年齢もはっきりしなかった。
流石に10代ではないだろうが、20代後半から50代前半の間のどれにでも当てはまるかのような、年齢不詳さを醸し出していた。
「You are Shock! 遠路はるばる、ご苦労様」
「(愛を取り戻せ!?)あ~~、いえ。どうもはじめまして。〇〇です」
内心どぎまぎしながらも半ば反射的に天笑へと挨拶を返す私。
「どうぞ楽にして下さいな。取って食うつもりなどありませんよ」
「はい……えぇ」
重ねて言うがこれは想定外だった。
遠目に一目見るくらいならあるかもしれないと踏んでいたものの、初っ端に教団-トライブ-のトップと直に話すことなど、夢にも思っていなかった。
「ご機嫌麗しゅう我らが神よ。早速ですが、こちら〇〇さんのプロフィールに「待ちなさい」……?」
先程私が記入したヒアリングシートを渡そうとした年配の女性は、しかし天笑にそれを遮られた。
「そのようなものを拝見せずとも、心眼を刮目すれば良いのです」
「は?」
理解不能な言動に呆気にとられる私とは対照的に、年配の女性は小刻みに震えながらその場にうずくまってしまった。
いや、正確に言うなれば天笑に向かって土下座し、全力で謝罪をし始めた。
「たっ……いへん失礼いたしました! 精進が足りずに神の意向にそぐわない言動、誠に申し訳ございませんでした! 何卒、なにとぞご勘弁を!!!」
(………………)
私は何も言えず、硬直したまま両者のやり取りを見守るしかできなかった。
「顔を上げなさい。恨みは水に流し恩は石に刻むもの。その気持ちを忘れるのではないですよ」
「ッッッ! ありがとうございます! ありがとうございますぅうううぅぅうううう!!!」
差し伸べられた天笑の手に縋りながら、号泣し額を床に打ち付ける様に感謝の意を述べる年配の女性。
この時点で私はかなり引いていたし、今すぐに帰りたい気持ちになっていた。
が、しかし――。
「さぁ行きなさい。私はこの方と第6部について語らわなければならないのですから」
(ん……?)
「むしろそこに限定しなくとも作品全体を通して意見交換をしたいところですね。手始めに好きなスタンドとか」
(ちょっと待て……)
ヒアリングシートは、まだ年配の女性が握ったままなのに。
何故こいつは、私がジョジョを好きなのを、当然の様に知っている??