宮園クランがなんやかんやで小説家になるまでのブログ

凡そ社会的地位の無い30代男性が小説家を目指す為のブログ

実録!宗教☆勧誘(その3)

※これは事実を元にしたフィクションです。登場する個人名・団体名などはすべて架空のものなのでご留意ください。


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それから3時間ばかりが経過した。

システムエラーが発生したせいで急遽メンテナンスを行わなければならない事態が発生したらしい。

その報を受けた私は、社内ポータルサイトに告知ページを作成したり、顧客に対する周知の為の一斉メール配信の準備をしたりで、気が付けば夕刻になっていた。

ようやくひと段落つき、一服すべくベランダに出て煙草に火を付ける。

煙草を吐き出しながら、ナガノと名乗った女に渡されたA4サイズのチラシを私は眺めていた。



冥王星より来たりし救世の神 天笑優雅様

とどまる所を知らない政治家の横暴。
新型コロナウイルスの蔓延。
決して埋まらない貧困の格差。

弱者は踏みにじられるばかりで、現世は荒廃の一途を辿っています。
やがて訪れる審判の戦-ラグナロク-により海は枯れ、地は裂け、あらゆる生命体は絶滅してしまうでしょう。

けれどもご安心下さい。
万緑叢中紅一点(ばんりょくそうちゅうこういってん)。
我らが救世の神たる天笑優雅(てんしょうゆうが)様が、この地球に降臨なさりました。

穢愚世-エグゼ-を打ち破りし奇跡の数々を体験し、寵愛を受ける権利があなたにはあるのです。
千年王国の幕開けを、我ら教団-トライブ-と共に見届けましょう。



「うわぁ……」

突っ込みどころが多すぎる内容だった。


いわゆる新興宗教、勧誘に使う為のチラシの一種なのだろう。

昼過ぎに玄関先で声を掛けられるも「仕事があるから別日に改めて欲しい」と断った私を物ともせず、半ば押し付けるようにして彼女はこの紙切れを渡してきたのだ。


「真ん中あたりにあるこのくだり、完全に北斗の拳の冒頭のナレーションをパクってるじゃないか……それに穢愚世-エグゼ-って……ロックマンかよ」

他人事であれば微笑みながら流し読み出来るのだが、こと今回に至っては私は当事者なのだ。

笑えないにも程がある。


別れ際、来週またお伺いします彼女は言っていた。

つまり次の木曜日が来れば、私は彼女から本格的な勧誘を受けるのだろう。

居留守を使おうにも、一度姿を見られている以上執拗に粘られる可能性もある。

何より私はナガノの来訪に対し口約束ながらも「分かりました」と了承してしまっていた。

自業自得にも程がある。


どうしようどうしよう嫌だな嫌だな面倒だなと思いながら、やがて一週間後の木曜日がやってきた。