宮園クランがなんやかんやで小説家になるまでのブログ

凡そ社会的地位の無い30代男性が小説家を目指す為のブログ

ラブ♡マイ♡ブライド【毬】

◇主要登場人物◇




☆白石天  (シライシタカシ)    : 主人公


♤脳針筵  (ノウバリムシロ)    : 流浪人


綺羅星ねね(キラボシネネ)    : 幼子


△箒谷塗炭 (ホウキダニトタン)   : 番人


♡伽藍真衣 (ガランマイ)      : 罪人







残念ながら 最終回です





前回までの粗筋を記すその前に、まずは改めて主人公の生い立ちというか、その生き方や考え方について言及をしておこう。



白石天。二十歳になったばかりの、性別は男子。



父である悟と母である愛の間に長男として生まれた彼は、それなりに不自由なく幼年期から青年期までの間を過ごしてきた。二桁いくかいかないがぐらいの同年代の友人もいて、苛めることも苛められることもない学生時代を過ごしてきた。



医者になるという目標の為に二年間の浪人生活を耐え抜き、晴れてこの四月より国公立の大学に通える資格も有している。



一般的に凡庸ではなく非凡な点を挙げるならば、天は「納得がいかなければ突き詰めて行動する」という特性を持っていた。



高等学校を卒業してからの浪人生活は正にそうであったし、自分以外の他者においてもそれは変わらない。交友関係でトラブルが生じた際は、場をおさめる為に自らが体育館の2階から飛び降り大怪我をしたりだとか、スクールカーストの頂点に君臨する4つ年上の女生徒“クイーン・ビー”の毛髪をジッポオイルで浸した後に全てき払った勲功などもある(勿論その後の取巻きにおける報復行為は集中治療室に運び込まれるほどの陰鬱で凄惨を極めるものであった)



一度で叶わなければ叶うまで諦めない。自分が気に入らなければ何があっても全力で潰す。



運動部に所属していた実績があるとはいえ、彼は特段恵体でもなかったし、乱暴狼藉を許されていない公然の場で暴力を行使することに快感を覚える狂犬風情などではなかった。



一貫してブレない姿勢は、この度の「夢の中からSOSを飛ばしている女性を助ける」為にわざわざ遠方であるこの緑夜叉まで時間をかけて単身で訪れて、且つ「魔術師の成れの果て」である番人の役割を持つ水汽氷汰を問答無用で屠った経緯からも、容易に伺えるだろう。



《どこにいるかも分からない。名前もしらないあなたへ。いずれんでしまうその前に。どうかわたくしを助けてください》



いつからか自らに発された言葉の中にあるというワード。何も持たずに乗り込むのは危険過ぎると推測し、先般のスタンガンや食塩水のような“いくつかの武器”を衣服やショルダーバックに携えてきたのは、現時点では僥倖ではあった。



そんな彼が次に対峙する相手には、その武装を駆使することを許されない状態で合間見えるなどと、分かるべくもなくして。



静寂と闇が支配する道中、ようやく次の目的地である爾門とおぼしき建物に天は到着した。



水汽が留守を任されていた処門の蛇に対し、虎のような紋様が描かれている。彼を撃退した後に入手したメモ書きによれば、ここには箒谷塗炭なる人物が居座っているはずである。



入り口より中に這入り、処門と同様に板張りの床を進んでいくと、これまた同じく広間のような造りの部屋に繋がっていた。



置き行灯に照らされ、一人の女の子と一人の男らしき何かが床に横たわっていた。



「こんばんわ、おじょうさん。俺は白石天という者ですが、おじょうさんが箒谷塗炭であっているのかな」



まんが日本昔話に出てきそうな黒髪のおかっぱ頭に、深緑の着物をぴったりと着こなしている。天が視界に入っていることに気づいているのか気づいていないのか呼びかけに応えず、女の子は歌いながらお手玉を嗜んでいた。



「いっちばんっ、はじめはっ、いっちのみやっ。にぃ~はっ、にっこうっ、とうしょーぐうっ。さーんは、さくらのむねっ、さくらのっ、そうごっろう~」



見たところ、小学生になりたてぐらいの年齢であろうか。夜更けにて淡々と古風な遊びに興じる女児。シチュエーション的には怪談のそれでしか無かった。



声をかけて無視された程度で天の自尊心が傷つけられることはなかったにせよ、横たわっている男に目をやり、天は戦慄する。



(女の子が影でうまく見えなかったけど――あれたぶんんでいるよな)



横たわっているように見えた男は、見れば身体のいたる箇所が猛禽類か何かに食い散らかされたように、歪な形成を成している。それに気がついたこともあり、室内を強い鉄分の香りが漂っている理由なのだと感じた。



「よーんっは、しなののっ、ぜんこうじ~。いつつっ、いずものっ、おおやしろ~」



絶命しているであろう男を気にもかけずに、女の子はお手玉と歌に夢中になっている。5つの小さな手製のお手玉を地に落とさずに掴んでは投げ、投げては掴んでを繰り返す様は、一流のジャグリング師を連想させた。



「彼女の名前は綺羅星ねねちゃんといってね、キミが探している箒谷とは違うよ」



天の右側。その辺りから不意に声がした。



「そしてボクもまた別の人物。はじめまして、白石くん。脳針筵だ、よろしくな」



床から天井まで伸びている支柱の影から、男なのか女なのか判断が付かない、中性的な人間が姿を現しつつ、天に向かって声をかけてくる。声を発されるまでの間に気配は、全く感じられなかった。



「こんばんは、脳針さん。それでは、そこで寝ているのが箒谷塗炭さんということで、よろしいのでしょうか」



「キミの推察は概ね正しいというか、その認識で合ってるよ。駁流の狩人こと、箒谷塗炭。ここ爾門を任されていた、第二の番人だね」



「一見するとんでいるようですが、これはあなたがやったのですか?」



「う~ん、結果から言うとボクがっちゃったんだけど。先に仕掛けてきたのは彼だからねぇ。お願い事をしたのに、酷く気分を害したみたいでね。問答無用だったよ」



「そのお願い、とは?」



「『魔力を一切持たない妨害者が奇跡的に処門を突破したことを祝して、キミが守る鍵をボクにくれよ』って頼んだ」



言って、脳針は天に向かって何かを投げてよこした。受け取ると、それは水汽が持っていた物と同じ様な形をした、鍵のような物体であった。



「ボクはね、昔はこの緑夜叉村に住んでいたんだ。でも何かにつけて儀式とか生贄とかが大好きな周囲の人間に、そのうちついていけなくなっちゃってね。普段は日本各地を定住する事無く、旅して過ごすただの根無し草みたいなもんさ」



くすくすと笑う脳針は、確かにこの村にそぐわぬ格好をしている。上から下までが迷彩色を基調としたミリタリースタイル。流石に銃は携帯しているように見えないが、見えないのだが、それにしてもだ。コイツはどのような方法で箒谷をあそこまで蹂躙したのだろうかと天は考える。考えた所で、なんらかの魔術なる能力を行使したとして、衣服にはの一滴も付いていない様に見えることから、結果として考察の域から能力特定には至らなかった。



「まぁそれはどうでも良いんだけどね。ともかく、その鍵はサービスだよ。あと3つ集めれば、キミが助けに来た女の子が囚われている牢獄は、突破できるだろうし」



「俺の記憶が正常であれば、おそらく脳針さんと会うのは本日が初だと思います。どうして、面識のない人間にそこまで好意的に動いて頂けるのでしょうか?」



「キミは質問ばかりするな。いや、悪くないか。聞くは一時の恥・聞かぬは一生の恥を愚直に行くスタイル、嫌いじゃないよ」



「俺はあいにく、普通の人間より頭が悪いもので」



「フフフ、今度は無知の知かい。いいね、必要以上に己を強く見せようとする愚鈍でもないらしい。ますます気に入ったよ。あ、質問に対する返答がまだだったね。さっき言った通り、『魔力を持たない人間が魔術師を倒した』事実が賞賛に値するからさ。何年かに一度開催される儀式――聞こえは良いけど、都合の悪い村人を権力者が公で処刑するだけの私刑なのはさておき――これに外部から罪人を助ける妨害者という者が召集されるんだけど、大抵なんらかの魔術を使える人間がやってくるんだよね。ここ五十年くらいの間は、良いとこ惨門に到達するのがやっとだったのに、キミはいとも簡単に処門を突破せしめた。たまたま帰郷し、その一連の流れを見ていたボクは思ったのさ。『やるじゃん』ってね。つまりは、そういうことだよ」



要約すると、脳針は天が初戦突破をした事実に対して、少しだけ手伝ってくれた、のであろうか。真意は分からないが、番人であった箒谷を無残な亡骸にせしめる暴力性を秘めている男(いや女か?)と、無為に敵対する理由は天には見つからなかったので、素直に礼を述べることにした。



「そうでしたか。こんな若僧である俺に、勿体無いぐらいの一助をいただき、感謝します」



「いいね、そうやって直ぐに礼を言える奴は、嫌いじゃない。キミは本当に良い奴だ。初対面がこんなシーンでなければ、友達になれたかもしれないのが残念だ。惜しい、惜しいね。惜しいからこそ、おじちゃんはもう一つだけサービスをすることにしよう」



「サービス?」



「これから先に進む際、化け物みたいな能力を使う魔術師が出てくるかもしれないだろう。それに対抗する手段を、今からやるゲームに勝てば、授けてあげるってこと」



ねねちゃんこのおにいちゃんが遊んでくれるってさ、と脳針は綺羅星なる幼女に声をかけた。



「ほんとっ!?あそぶっ、ねねこのおにいちゃんと、あそぶ~」



天が声をかけた時は一切反応しなかった綺羅星は、お手玉と歌を歌うのを止め、満面の笑みで五つあった内の一つを、天に向かって投げつけてきた。



ぱしんっ。左手でそれを受け取る。



「して、ゲームとは?」



「簡単さ。相手は子供だし、変に趣向を凝らす必要も無いだろうよ。“彼女が持つお手玉が全て地面に落ち”ればキミの勝ちで、“それ以外”であれば彼女の勝ちとする。さてと一応訊いておくけど、この勝負受けるかい?」



「キャッチボール、とはちょっと違うか。まぁいいでしょう、その勝負受けて立ちます」



見事な玉捌きを見ていた為、前提“お手玉を長く続けた方が勝利”とかであれば、それこそ自分に勝機はないので、大人しく引くつもりであった。



玉をキャッチしたときも、何のことはない、小豆か何かを詰め込み布を縫い合わせただけの、ただのお手玉である。危険は無いと判断し、天は勝負を受けたのだ。



先刻の水汽と命のやり取りをした後の、児戯染みたやり取りに、彼はどこか油断をしていたのかもしれない。



早いとこ終わらすかと、空いた右手で頭の後ろをぽりぽりと掻いた、その瞬間――凶弾が天に命中する。


「!?――ぐぁ・・・・・・・!!!」



左肩と肩甲骨の間あたりに、強烈な痛みが走る。重い鉄球がぶつかったかのような感覚。痛みに目を細めながら視線を落とすとそこには――なんのことはない、天が既に目にしていたお手玉が、ぎゅるぎゅると音をたてて肉体にめり込んでいる――!



数秒前。左手でお手玉を持ち、右手で頭を掻き、即ち両手が両手とも塞がった状態を確認するや否や、綺羅星は残す4つの内の一つのお手玉を天に向かって投げていた。



10歳にも満たない幼女が、それこそ肘から上だけ持ちあげて前方に放り投げる一連の動作。天までとの距離である10メートル間が届くことすら危ういその動作自体には、なんの問題も無かったのだが。



「魔術ってのはね、物体に関与する為には、どうしても詠唱が必要なんだ」



とても愉快そうな声色で、痛みにうずくまりそうな天に向かって、脳針は話しかける。



「威力が高ければ高いほど、非現実的であればあるほど、その詠唱時間は長く複雑なもとのなる。でもね、普段からその詠唱を言い聞かせていれば――インプットさえしていれば、発動までの時間はかなり短縮出来るだろうね」



「インプット・・・・・・?」



「勘のいいキミなら既に分かってると思ったのに。ふふんっ、案外“痛み”には弱いんだな。しょうがないなぁー、おじちゃんは優しいからヒントをあげよう。ねねちゃんは、お手玉をしながら、同時に何をしていたのかな?」



(!!!)



脳針から視線を戻すと同時に、天の顔面の際を、鉄球と同様の速度と重量を持つであろう球体がすり抜けていた。後の壁を貫通したであろう、派手な倒壊音が室内にこだまする。



「なるほどね――歌が詠唱の役割を果たしている、のでしょうか」



「正解。冴えてるね。とはいえ残る玉を五体満足で、果たしてキミにはかわせるかな?」



幾分か勢いが無くなった肩にめり込んでいた分と左手に握っていたものを床に落とし、天は考える。



(骨は折れていない。かなり痛いが動くには、負担にはならない。さてどうする)



モノはお手玉ながら砲弾と相違ない威力を有するそれらは、視認する限りで残りあと、2発。



(近づいて無理やり奪い取るか?いや、迎撃されかねない。ならば距離を保ったまま相手を無力化するしか――)



ショルダーバックより手製のテーザー銃を取り出そうとした時だった。


























ぞわり、と。

























悪寒が、天の全身を駆け巡った。呼吸一つすらままならない、冷や汗が一気に吹き出る。






「いい忘れたけどさ、いや言う必要がなかったから敢えて言わなかったのだけれども」



自らに向けられたであろう気の発生源を向く。脳針は、人とは思えない無表情のまま、見下げる様な具合で、天に語りかけた。



「相手はかわいい女の子でこどもなんだよ。何か大事があったら、その瞬間 お 前 を 喰 ら う ぞ



(――化け物かこいつは)



伸ばしかけた右手を元に戻し、相手に危害を加える事無く終了する条件を考える。考えた結果、どうやら無傷で場を収めることが不能である結論に至った。



「これは、きっと罰なのでしょう。命がけで、自らぬことも厭わぬ気負いで来ていた俺が、緩んで弛んでいた所為の、ペナルティとして甘んじて受け止めましょう」



自らを鼓舞するように、独白する。



「鉄球であるかのように砲丸並の威力を有するその魔術、確かに厄介ではありますが――」



頭蓋に命中さえしなければ――にはしない!



そして、天は予備動作もなく、綺羅星へと向かって一直線に駆け出した。



「きゃはきゃは!おにいちゃんっ!こんなのはどうかなっ!」



綺羅星は、向かってくる天に対し、あさっての方向である両端――右と左にひとつづつお手玉を放り投げる。



互いが脇にある支柱にぶつかった瞬間、物理法則を無視した動きと質量をもってぎゅるぎゅると音を立てながら、二対の凶弾が天を的に見立てて襲い掛かった。



距離、残す所7メートル。



(無理に避けようとするな。恐ろしく痛いだろうが な ん か と か し て 耐えろ・・・・・・・・・!!!)



5メートルに入ったところで、右側のお手玉が横腹の上部に命中する。



「痛ッ!!!!!!」



肋骨が折れる音がした。形容しがたい痛みに、足が止まりそうになる。だが止まらない、止めるわけにはいかない。残り3メートル。



左側のお手玉はしゅるしゅると音を立てながら、この場が無重力であるかのように空中をゆっくりと浮遊していた。緩急もつける事が出来るらしい。いつ暴力的な速度をもってこちらに飛んでくるかは分からない。



(これは賭けだ。ハズせばたぶんぬ)



残り2メートル。綺羅星はもう既にお手玉を投げきっている。左側のそれがぎゅんと音を立て、加速度的なスピードで己に向かって飛んでくる。



ダメージを負った左腕で、頭を庇うようにしてガード。肘に近い二の腕に命中。またも骨の折れる音がした。



(あとは相手の出方次第・・・・・・頼むぞ)



残り1メートルを切った。手を伸ばせば届く距離――間近に接近した所で、天はリュックサックに手を伸ばし、ソレを掴み、引きずり出すようにして綺羅星の目の前に取り出した。























「おじょうさん、ままごとは好きかい?」






天の右手には、フエルトで編まれた人形が握られていた。



一瞬、なんのことかわからなかったのか、きょとんとした表情を浮かべる綺羅星だったが。



「ねねっ、おままごとだーいすき!あそぶ!あそぶ!」



それが何か分かるとにんまりとした笑みを浮かべ、嬉しそうに叫んだ。



膝を突いて、その場に倒れこむようにしてうずくまる天に。



ぽすっ、と。



上方から振ってきたお手玉が頭へと落ち、そして当たった。



上を向くと一点の穴が空いている。どうやら3発目のお手玉が建物外に出た後反射をして上昇し、結果室内に舞い戻ってきたようだ。途中まで魔術が発動していたことを如実に表していると気づき、やれやれ間一髪であったのだなと、天は安堵する。



「無事とは言えないが、君の勝ちだね。おめでとう」



手を叩きながら、脳針が近づいてくる。先程のような意は毛ほども感じなかった。



「これで二人目か、凄いね本当。なんなら今回に関しては武器すらも使っていない。キミって奴は本当に素晴らしいな」



「損傷具合が半端無いのを除けば、ですが」



緊張が解けたからか、麻痺していた痛みがじわじわと感覚として表れてくる。左腕はもう使い物にならないだろう。それと肋骨が折れたせいで、息をするのも難儀な状態である。



「運良く無傷でここまで来れたのを、実力であると勘違いして欲しくなかったのさ。魔力のない人間が余力を残したまま進むということは、二度目になるがそれこそ奇跡に奇跡を重ねたような薄い確率なんだよ。一歩間違えればね、んじゃうんだよ」



それこそあっけなくね、と脳針は言う。



「勝ちは勝ちです。早くサービスとやらを俺に下さいよ、正直立っているのも辛いんです」



血はしていないとはいえ、骨折による痛みと腫れは、明らかに天の体力を消耗していた。



それですら愉快な見世物であるかのように、脳針は微笑む。



「うんうん、分かってるよ。サービスね。満身創痍で傷ついたキミへ、ボクからのご褒美だよ」



うずくまる天の顎を、右手でぐいっと自らに向けて。









顔を近づけ――唇を重ねた。









「・・・・・・・・・む?」



べろりと口内に脳針の舌が侵入してくる。ごくりと息を呑み、自分が何をされているのか初めて理解し、たまらず右手で相手を突き飛ばした。



「何やってるんですかあなたは」



「ん~、だからご褒美だってばさ。それとも初キスだったとかぁ~」



茶化す脳針に憤りを覚え(そもそも本当に初めてであった事も含まれているが)胸倉を掴もうと立ち上がった時であった。



(痛みが――消えている?)



肩も腕も肋骨も、全部が全部何事も無かったかのように治っていた。



「ボクの本来の魔術とは違うんだけどね。説明不足もあったし、治療はサービスってことで」



正になんでもありだなと、天は頭を抱える。それこそ医学を志す自分からすれば、ただの接吻で骨折が治せるなんて事象は、やる気が削がれまくる話であった。



「とりあえず、ありがとうございました。それと、ねねちゃん。その人形だけど、こっちの奴とかえっこしても良いかな」



ままごとと称して天が渡した人形と色違いのものを綺羅星と交換し、ショルダーバックにしまった。



「その人形、キミが作ったのかい?」



「えぇ、そうですよ。何があるか分からなかったので、念の為にね」



「あははっ。別の使い方をしてたならば、ボクも黙ってなかったかもねー」



「勘弁してくださいよ。さっきだってされるかと思ったのですから」









その後、いくつかのやり取りがあった後、先を急ぐのでと簡単な挨拶を交わし、天は二人と別れた。



処門に至り、爾門を越えて、次に目指すは惨の門。



番人である刑部牢庫と顔をあわせることはなく、






“現六夜叉村最強”の称号を冠する魔術師と対峙する未来を、彼はまだ知らない。






[Bean-bag Child] is Laughing!!


To Be Continued...▶︎▶︎▶︎Next【骸】





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