※これは事実を元にしたフィクションです。登場する個人名・団体名などはすべて架空のものなのでご留意ください。
「敵味方サイド含め、全キャラクターに光るモノを感じるので、誰が一番って問われると難しいところですね。でもまぁ、強いて言うならフーファイターズ……ですかね? 知識を持った生物、本体がイコールでスタンドって概念が奇抜で度肝を抜かれましたし、ケンゾー戦でのラストがアツいんですよね。そういう意味では次点としてはジョリーン、かな。最初は父親にコンプレックスを持った年頃の少女でしかなかった彼女が、作中を通して精神的に成長していくのは、過去1~5部の主人公に無い魅力を感じます。特に懲罰房編から刑務所脱出編にかけての覚醒具合が半端なかったです。リアルタイムで追ってたので、あれはドキドキしましたね」
「なるほど。大抵の人は3部か5部、玄人を気取ってる方は2部か4部なんて言いますが、貴方がどれだけ6部が好きかよく伝わってきますよ。確かにあの辺りは一気に盛り上がりますね。アース・ウインド・アンド・ファイヤー――じゃなくて、プラネットウェイブス戦でのジョリーンは実にイキイキしていてついページを捲る手が早くなってしまう、分かりますよ」
全て書き起こすとそれなりな量になってしまうので一部を抜粋、割愛しての会話になるが、私は5分ほど天笑とジョジョ談義を行った。
そして相手がかなり詳しい知識量を有していることに驚きを隠せなかった。
※ジャンプ本誌と単行本とでスタンド名が変わっているこの逸話はそれなりにマニアックであって、そもそも知らない人間の方が多い気がする。
私に限らず人というものは、“共通の話題について語らいあえる対話相手”を、無自覚ながら常に欲している帰来があるのではないだろうか。
新興宗教団体の教祖でなければ、普通に気を許せる友人になれるに違いないと錯覚してしまうぐらいに、天笑は間の詰め方が上手な人間だった。
本心は勿論、分からないにせよ。
「おっと。もうこんな時間だ。すっかり話が盛り上がってきたところで恐縮ですが、○○さん。私はそろそろ行かなければなりませんので」
天笑はまだまだ話し足りないとでも言いたそうに名残惜しそうな表情を浮かべていた。
てっきりそのまま部屋を去ると思っていたのだが、しかし天笑は振り返らずに背を向けたまま、私へと声をかけてきた。
「あぁ、そうそう。ナガノさんをここから逃がそうとしている点について、私は止めないので好きになさってくださいね」
「ーーッ!!!」
思わず息を呑んで、私は硬直してしまう。
アイジマから託された裏ミッションすらをも、初対面である天笑が既に見透かし把握しているという事実に、驚愕せざるを得なかった。
「ただし。この教団から引き抜きを行おうとするからにはそれ相応の覚悟をして下さいね。人生は一度きり、無二のものですから」
「それは脅し、でしょうか?」
「いいえ? 私は何もしませんよ。ですが と て も 熱 心 な 信 者 もうちには沢山、いるのでね」
「……ご忠告、痛み入ります」
首を傾けて狼狽する私を眺めながら、今度こそ天笑は控室から去って行った。
この時点をもってして、私は腹を括ったというか、改めて覚悟を決めることが出来たのだと思う。
想像よりも遥かに危うい領域に足を踏み入れてしまっているのだという、そんな現実をようやく受け入れられた気がしたのだ。